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アメリカのFCビジネスを視察―第2回 専門家と巡るNYフランチャイズ視察ツアーレポート―

アメリカNYフランチャイズ視察ツアーレポート

バード国際特許事務所代表の小林です。
今年5月末に、株式会社ビジネスチャンス主催の「NYフランチャイズ視察ツアー」に参加しました。そのため今回は、ツアーの様子をレポートします。

【目次】

  1. 背景
  2. アメリカのフランチャイズ事情
  3. 日本未上陸の業態を多数視察
  4. 世界最大級のフランチャイズ展示会へ
  5. 今回のツアーで得た知見

背景

アメリカNYフランチャイズ視察ツアーレポート

株式会社ビジネスチャンスは、フランチャイズの専門誌『ビジネスチャンス』を発行する出版社です。以前、私は同誌にて「ブランドを守るために必ず商標登録を」という連載を持っていました。

フランチャイズと商標の関係は密接です。
フランチャイズとは、フランチャイザー(本部)が持つ看板や商品、サービス、運営ノウハウなどを、フランチャイジー(加盟店)が使用許諾を得て事業を行うビジネスモデルのことです。
フランチャイジーは、フランチャイザーから各種ノウハウやサポートを受ける対価として、加盟金やロイヤリティなどの対価を支払います。
ここまでが大前提のお話です。

しかし、フランチャイザーが商標権を有していない場合、ブランドの”看板”を貸すという前提が成り立ちません。そうなると契約書が結べず、フランチャイズ展開ができなくなってしまいます。
言い換えれば、フランチャイズ展開をするのであれば、商標登録は不可欠なのです。

また、いずれはフランチャイズ化を目指す方も、早めの商標登録をおすすめします。なぜなら、他社に先を越されてしまうと既存の商標が使えなくなるからです。
そうなると、いくら知名度があっても既存の看板やロゴを変更しなければなりません。これを防ぐためにも、商標登録は儲かる前、知名度が上がる前に行いましょう。

ブランド名やロゴを商標登録しておくことで、模倣や不正利用を防ぎ、ブランド全体の価値を守ることにも繫がります。

こうしたフランチャイズと商標の関係性から、ビジネスチャンスと接点を持つようになり、今回は同社が企画するツアーに参加しました。

アメリカのフランチャイズ事情

アメリカの市場可能性は誰もが知るところです。
人口減少により日本市場が縮小傾向にある今、海外進出を検討される企業様は急増しています。

フランチャイズに限って言うと、日本の市場規模が約26兆円であるのに対し、アメリカの市場規模は約150兆円。日本の約6倍です。また、アメリカはフランチャイズビジネス発祥の国であることから、業態に多様性があり、FCに関する法律やシステムを含め、あらゆる面で発展しています。

今回参加したツアーは、日米でフランチャイズのコンサルティング事業を営む、I. Fujita Internationalの藤田 一郎社長が完全協力しています。

アメリカNYフランチャイズ視察ツアーレポート

写真左から2番目が藤田 一郎社長

FCトレンドや、アメリカにおける日本コンテンツの可能性、具体的な進出方法など、アメリカで事業展開するうえで必要な情報を教えていただきました。

●米国FCの5大トレンド

  • ★健康・フィットネス
    米国人の健康意識の高まりによりトレンドイン
  • ★介護サービス
    米国の高齢化社会の進行によりニーズ増大
  • ★ドライブスルー
    コロナ禍のテイクアウト文化で浸透
  • ★ペット関連サービス
    近年のペット人気と利益率の高さが相まって急拡大
  • ★アジアンフード
    アジア系アメリカ人の台頭により人気上昇

上記のうち、「ドライブスルー」と「ペット関連サービス」は、コロナをきっかけに伸びた業態です。

ペット関連サービスは、ペットホテルやグルーミング、ドッグトレーニングやペットサプライショップなどが含まれます。
コロナ禍の外出自粛でペットを飼う人が増えたため、こうしたペット関連サービスの需要は年々高まっています。現在の市場規模は162兆円ですが、2030年には373兆円になるとも言われています。

ペット関連ビジネスは再現度も高いため、日本上陸する日も近いかもしれません。

日本未上陸の業態を多数視察

ツアーの目玉イベントの1つである「店舗視察」は、2日間に分けて実施されました。
視察スケジュールは下記のとおりで、合計9店舗を巡りました。

●5月27日(火)
10:00
ホテル出発
10:30
River’s Edge(富裕層向け高齢者施設)
12:00
Phenix Salon Suites (美容シェアサロン)
13:30
FAN FAN Doughnuts(ドーナツ店)
14:30
Chuck E. Cheese(子ども向け施設)
16:30
Burger Fi (ハンバーガー店)
●5月30日(金)
10:00
ホテル出発
10:20
Happier Grocery (高級グロサリー)
11:00
BonBon (グミキャンディー屋)
11:30
J’s Kitchen(フードデリバリー店)
12:45
Levain bakery(クッキー屋) 

店舗視察1日目は、NYに到着した次の日に行われました。
1番最初の目的地は、富裕層向けの高齢者施設「River’s Edge」です。

アメリカNYフランチャイズ視察ツアーレポート

富裕層向けとあって、施設内の設備はかなり充実しています。高級からカジュアルまで多種多様なレストランに加え、屋内海水プールやスパ、映画館や劇場などの娯楽もあります。
近隣に医療施設もあるため、急な体調変化にも対応できます。まさに、高齢者専用のアイランドリゾートでした。

ちなみに、同施設に入居するにはデポジットとして〇万円、維持費として毎月〇万円が発生します。日本では考えられないようなお値段です。

次に向かったのは、美容シェアサロンの「Phenix Salon Suites」です。

アメリカNYフランチャイズ視察ツアーレポート

商業施設の一角の210坪のスペースを約40の小部屋に区分し、美容オーナーに貸出しています。

小部屋には、ヘアサロンやネイルサロン、リラクゼーションサロンやタトゥーサロンなどが入居しており、同施設内でさまざまな美容サービスが受けられるようになっていました。
女性にはとっても便利な施設です。

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これまでNY市内の店舗を見てきましたが、以降はブルックリン地区の視察となります。
専用車で約1時間移動し、ブルックリンに到着です。

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次の視察先は、アジア人オーナーが営むドーナツ屋「FAN FAN Doughnuts」です。

アメリカNYフランチャイズ視察ツアーレポート

アメリカの甘くて派手なドーナツとは異なり、柚子やマンゴーなどのフレッシュフルーツを使った自然派志向のドーナツです。
甘さと油分が控えめで食べやすく、日本人好みの味でした。

次は、子ども向け施設「Chuck E. Cheese」です。

アメリカNYフランチャイズ視察ツアーレポート

ゲームセンターの要素が加わったピザチェーンで、子どもたちは食事の傍らにアーケードゲームやメリーゴーランド、ボールプールなどのさまざまなアトラクションを楽しめます。
今回訪れたブルックリンの店舗は、Atlantic Terminal Mallというショッピングセンター内に入っていました。

店舗視察1日目、最後の視察先はハンバーガーチェーンの「Burger Fi」です。

アメリカNYフランチャイズ視察ツアーレポート

同店は素材と鮮度にこだわりを持ち、すべての食材を店内で手洗いした後、調理しています。
最高品質のアンガスビーフのみを使用して作られたパティは、とてもジューシーで食べ応えがありました。

アメリカNYフランチャイズ視察ツアーレポート

Burger Fiの創業者であるJohn Rosatti氏が、私たちツアー参加者のためにフロリダから駆けつけ、商品のこだわりについて教えてくれました。

店舗視察1日目の夜は、自由の女神クルーズに乗船しました。

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店舗視察2日目には、富裕層や健康志向の人をターゲットにした高級グロサリー「Happier Grocery」や、NYで人気急上昇中のスイーツ店を巡りました。

アメリカNYフランチャイズ視察ツアーレポート

中でも、日本企業が手掛けるフードデリバリー店「J’s Kitchen」は、NYで本格的な日本食が楽しめる貴重なお店となっており、牛丼やハンバーグ、みそ汁といった馴染みある味を堪能できました。

アメリカNYフランチャイズ視察ツアーレポート

世界最大級のフランチャイズ展示会へ

NYでは毎年5月末に、世界最大級のフランチャイズイベント「International Franchise Expo(通称:IFE)」が開催されます。

アメリカNYフランチャイズ視察ツアーレポート

IFEは、FC未登録の海外企業に課せられる申請が免除される唯一のFC展示会です。
カリフォルニアやテキサス、ノースカロライナなど他州で開催されるFC展示会よりも出展ハードルが低いことから、海外企業が多数参加しています。

今年は5月29日~5月31日の3日間開催で、世界各国から約300のブランドが出展しました。

アメリカNYフランチャイズ視察ツアーレポート

世界中のブランドが軒を連ねる中で、一際目立っていたのが「ジャパンパビリオン」です。
日本からは、カレーやおにぎり、クレープといった飲食業態に加え、カプセルトイも出展していました。

アメリカNYフランチャイズ視察ツアーレポート

日本でもお馴染みの「カレーハウスCoCo壱番屋」です。
アメリカでは日本式カレーの人気が高まっており、すでにCoCo壱をはじめ、「ゴーゴーカレー」や「チャンピオンカレー」が米国展開を開始しています。
現在は各社ともに数店舗での営業ですが、日本式カレーの認知が広がれば更なる成長加速が期待できます。
アメリカで日本式カレーがどこまで浸透するのか注目です。

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こちらは、表参道のベーカリーカフェ「パンとエスプレッソと」のクレープ専門店である「クレープとエスプレッソと」のブースです。
日本で約40店舗を構える同店は、それぞれの地域に根差した店づくりにこだわっています。古民家を改装したお店もあれば、地域の名産を使った限定メニューを出すお店もあります。
NYが舞台となる今回は、海外で圧倒的人気を誇る抹茶を使った和風クレープの試食を提供していました。
従来のもっちりクレープとは異なり、サクサクパリパリした食感が新鮮で美味しかったです。

また、ラーメン業態は「楽観ラーメン」と「屯ちん」の2ブランドが出展していました。

アメリカNYフランチャイズ視察ツアーレポート

写真左から「楽観ラーメン」、「屯ちん」

楽観ラーメンは、100%植物由来のスープで提供するベジー(Veggie)系ラーメンを提供しています。
米国内で健康志向が高まる今、市場にマッチした業態と言えるでしょう。

一方、屯ちんが提供するのは、鮮度と自家製にこだわる東京豚骨ラーメンです。
アメリカの外食文化を踏まえて、サイドやデザート、ドリンクメニューを拡充し、手羽先や餃子、かき氷など、日本の伝統食を多数展開しています。

アメリカの和食ブームの中で、ラーメンは寿司に次ぐ人気業態と言われています。
楽観ラーメンと屯ちんは、アメリカ人のニーズと食文化に合わせてローカライズしたブランドなので、現在の和食ブームを追い風に米国へ浸透していくと考えられます。

アメリカNYフランチャイズ視察ツアーレポート

こちらは、「OnigiriBurger」のブースです。
OnigiriBurgerは、バンズの代わりに米と海苔で具材を挟んだおにぎりです。
フォルムは“おにぎらず”に近いですが、“バーガー”として打ち出すことで、親しみやすさを演出しています。
米、海苔、具材のすべてにこだわっていて、中には、神戸牛ステーキや鰻、すき焼きが挟まったプレミアム商品もあります。
日本の高級食材を使った満足度の高いおにぎりで、来場者の心を掴んでいました。

そのほか、IFEではアメリカで人気のレストランや最先端のプログラミング教室、韓国フード専門店など、多種多様なブランドを見ることができました。

今回のツアーで得た知見

アメリカNYフランチャイズ視察ツアーレポート

日本の25倍の国土と2倍の人口を擁するアメリカ。
その市場規模は日本を凌駕しており、アメリカンドリームを夢見る経営者も少なくありません。

さらに今、アメリカでは空前の和食ブームが到来しています。
今回NY市内を視察する中で、日本食を提供する店を多数見かけました。
スーパーなどの小売店では寿司コーナーが常設されており、タイムズスクエア周辺には日本食屋が集結するエリアもありました。
さらに、IFEではラーメンやおにぎりなど日本食を提供するブースが大盛況でした。この状況を見ると、今後米国進出を検討する企業は益々増えると考えられます。

しかし、アメリカでビジネスを展開するには相応の準備が必要です。
訴訟大国と言われるくらいですから、ブランド名称やロゴなどの知財でトラブルが生じたときのためにも、米国特許や商標を持つことは必要不可欠です。

今回の視察ツアーを通して、アメリカにおけるフランチャイズビジネスの可能性と、これに付随する知的財産権の重要性を再認識できました。

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