コラム
バード国際特許事務所広報担当の土橋です。
令和6年度がスタートして早2か月半。
仕事・プライベート問わず、新年度を境に大きな変化があった方も少なくないのではないのでしょうか。
かく言う弊所も、5月1日付で旧伊藤・藤田特許事務所(新宿)と合併し、新たなフェーズへと足を踏み出しました。
そして、その合併作業が佳境を迎えた4月末から5月6日にかけて、わたくし土橋と弊所事務長は、アメリカの知財実務を学ぶべく、日ごろからお世話になっているアメリカの現地代理人の先生方のもとを訪れました。
バージニア州タイソンズに事務所を構えるウェスタマン・服部・ダニエルズ&エイドリアン法律事務所は、日本人弁理士で初めて米国特許弁護士 資格を取得された服部健一先生をはじめ、何名かの日本人弁護士やパテントエージェントが所属する法律事務所です。
今回こちらでお会いしたのは服部先生と、同じく日本人で米国特許弁護士の本橋美紀先生。
本橋先生は、弊所では主に商標でお世話になっています。
※現在本橋美紀先生はMillen, White, Zelano & Branigan, P.C.に所属されています。
Maier & Maier特許法律事務所は、米国特許庁に近くに本社を置く知財に特化した法律事務所です。
今回私たちを出迎えてくださったのは、Maier & Maier特許法律事務所の創設者のひとりであるティモシーJ.マイヤー先生と、特許技術者の横山さん。
弊社では、特許や商標にまつわるアメリカ国内の知財実務について幅広く相談に応じていただいています。
研修日のアメリカ特許庁見学の際に横山さんとともにご案内してくださったのは、Maier & Maier特許法律事務所で米国特許弁護士として活躍されているロバートW.バー先生。
バー先生は米国特許庁にて長年勤めてこられたキャリアをお持ちで、米国特許庁の施設について詳しく解説してくださいました。
米国弁理士である恩田先生と烏野先生がマネージャーを務める IPビジネスソリューションズ社は、アメリカと日本両国の知財事情に精通した事務所です。
恩田先生、烏野先生ともに定期的に日本に帰国されているそうで、恩田先生は日本人弁理士対象にアメリカでの出願時に審査が通りやすい明細書作成セミナーなども開催されているとのこと。
また、烏野先生は小学生のお子さんを持つパパということで、お互いの子育て事情についても楽しくお話しさせていただきました。
アメリカの一般消費者の動向が一番わかるのは、日用品を取り扱う地域住民ご用達の商店。
ということで、本橋先生のアテンドのもと、バージニア州タイソンズにあるスウォルマートに足を運びました。
ウォルマートはアメリカ国内に約5,320店舗をかまえるアメリカ最大手のスーパーマーケットのひとつで、アメリカの市場を知るにはうってつけのお店です。
店舗に足を踏み入れると、まず目に入ってくるのはズラリと陳列された青果品。
日本でおなじみのトマトやオレンジ、ピーマン(ただし巨大)、キャベツなどが並んでいます。
ちなみに、日本で新しい品種が開発されると「種苗法」という法律で権利が保護されますが、アメリカでは品種保護制度として「植物特許」「植物品種保護法」「一般特許法」などの法律があります。
その中で目を引いたのが、なんと白菜!
「Nappa Cabbage」というネーミングで売られていました。
近年では日本の野菜がアメリカでも定着しつつあり、一般的な食卓でも並ぶようになってきたそうです。
アメリカといえば、やっぱり甘~いアイスクリーム。
冷凍庫に個包装で売られていることが多い日本とは違い、ほぼ数本入った箱で売られていました。
驚くべきは、その種類の多さ。
約20mのレーンがすべて箱アイスコーナーでした。
パッケージを見てみると、日本でおなじみのブランドや、アメリカらしいビビットカラーのアイスキャンディーなど多種多様でしたが、いずれも商標登録を示す「®」が記されていて、商標に対する意識の高さがうかがえました。
ウォルマートを後にした私たちは、その足で近くのショッピングモールにある家電量販店を訪れました。
店内にはapple、LG、Samsungといった国際的な大手メーカーの販売コーナーがある中で、日本勢では唯一SONYが広い販売コーナーを有していました。
その一方で、日本メーカーを多く目にしたのがゲームコーナー。
Nintendo SwitchやPlay station5といったハードはもちろん、任天堂、CAPCOM、セガなどの日本国内でも人気のソフトが一堂に会していました。
ちなみに、このショッピングモールにはなんと「くら寿司」も出店していて、しかも日本の某人気アニメとコラボ中との看板が。
本橋先生に「日本のアニメは人気なんですか?」と伺ったところ、「このアニメに限らず大人気ですよ!」とのこと。
家電業界では日本の存在感が薄れていることに寂しさを覚えましたが、エンタメ業界ではジャパニーズカルチャーが盛り上がっていて、その対比がとても印象的でした。
日本に特許庁があるように、当然のことながらアメリカにも特許庁があります。
その名も「United States Patent and Trademark Office(USPTO)」です。
日本で「特許庁」と聞くとお固い官公庁のイメージですが、USPTOの本庁舎は吹き抜けの解放感あふれる施設で、いたるところにアメリカの技術発展に寄与した発明家たちを称える展示物が見られます。
こちらを案内してくださったMaier & Maier特許法律事務所のバー先生は、この本庁舎の高階層のフロアで長年勤務されていたそうで、その眺めは絶景なんだとか。
(私たちはスタッフではないので入れませんでした…)
また、USPTOにはミュージアムも併設されていて、アメリカのみならず世界の技術革新に携わった発明や発明家たちの資料や展示物を無料で見ることができます。
まだ存続している特許公報がおしゃれに飾られていたり、普段私たちが使う製品の進化の変遷が視覚的に理解できるよう展示されていたり、知財を身近に感じられるような工夫が至る所にちりばめられていて、大人も子どもも楽しめる空間になっています。
個人的に興味深かったのは、模造品に関する展示。
「本物はどっち?」という内容なのですが、正直わからない…
いち消費者として、知らない間に偽物を買っているんじゃ…?!と恐ろしくなる展示でした。
「海外で商売するということは、いわばアウェーでの戦い。不利な状態で戦うには、防御を万全にして挑まないと負ける確率が高いということを自覚しておくべき」
この言葉は、今回の研修の中で本橋美紀先生からいただいたアドバイスです。
アメリカの知的財産法は、出願人・権利者に明確かつ正確な権利を付与するために、非常に合理的に設計されています。
そのため、日本にはない申請フローが多々ありますが、その分権利を持っていることは強い武器となります。
もし、アメリカで知財をめぐってトラブルが生じた場合、相手から裁判も辞さないという積極的な姿勢を示されることも少なくありません(もちろん裁判に行く前に和解で決着することが望ましいですが)。
その時に相手と対等に戦うためには、米国特許もしくは商標を持っていることが絶対条件となります。
海外での知的財産権取得にかかる費用は膨大なため、悩ましい選択に迫られる事業者の方も多いかと思います。
しかし、海外で永続的な事業を実現するためにも、知的財産権の重要性を認識したうえで有効に活用していただけるよう、弊所もより一層的確なサポートをしていかなければと再認識した研修となりました。